記帳代行

記帳代行を依頼するタイミングの目安

日々の記帳を自分で行う「自計化」から、記帳代行への切り替えを検討するタイミングは、事業者によって異なります。取引量が増えてきたタイミングで検討する方もいれば、消費税の課税事業者になったことをきっかけに検討する方もいます。

この記事では、自計化を続けることが難しくなってきたサインと、記帳代行を依頼するタイミングの目安を整理します。

※税理士報酬・記帳代行料金には法令上の統一料金や公定価格はありません。以下は一定の条件を前提とした参考レンジであり、取引量、資料の状態、依頼先などにより異なります。最終更新:2026年7月。

自計化を続けることが難しくなってきたサイン

次のような状況が重なってきた場合、記帳代行への切り替えを検討するきっかけになりやすい傾向があります。

  • 会計ソフトへの入力が滞り、月をまたいで未入力の取引がたまっている
  • 月次試算表の作成が遅れ、経営状況をタイムリーに把握しにくくなっている
  • 取引量が増え、領収書・請求書・通帳・カード明細の突合に時間がかかっている
  • 銀行口座やクレジットカード、決済サービスの数が増えた
  • 消費税の課税事業者になり、区分経理など記帳の負担が増した
  • 法人化により、役員報酬、資本金、法人名義の取引、決算整理など処理項目が増え、自社だけでの記帳が難しくなってきた

消費税の課税事業者になると、取引ごとの課税・非課税等の区分、適用税率、適格請求書(インボイス)の有無、仕入税額控除に必要な帳簿・請求書等の保存など、記帳の負担が増える点にも注意が必要です。個別の区分判断に迷う場合は、税理士に確認することをおすすめします。

記帳代行に切り替えるメリット・デメリット

メリット

デメリット

記帳作業にかかる時間を減らし、本業に充てやすくなる

月額の記帳代行料が新たに発生する

会計ソフトの操作を自分で習得しなくても対応してもらえる

資料の提出や情報共有の手間は残る

専門的な体制で入力・確認が行われる場合は、誤りの抑制が期待できる(ただし提出資料の漏れ、説明不足、委託先側の入力誤りなどにより誤りが生じる可能性は残る)

試算表の納品が資料提出のタイミングに左右される

記帳代行は経理の手間を減らせる一方、費用が発生する点や、資料提出の作業自体はなくならない点を踏まえて検討することが大切です。

記帳を外注しても、依頼者側の確認は必要

記帳代行を依頼しても、記帳・帳簿保存・申告に関する納税者としての責任がすべて委託先に移るわけではありません。依頼した後も、依頼者側で行うべきことが残ります。

  • 取引資料を漏れなく提出すること、資料だけでは委託先が判断できない取引について説明すること
  • 作成された帳簿・残高・試算表を依頼者側でも確認すること(特に売上、借入金、役員・事業主との取引、私的支出)
  • 依頼したことをもって、記帳内容の正確性が保証されるわけではないと理解しておくこと

依頼タイミングの目安

依頼を検討する目安の一つに、月間の仕訳数があります。税理士事務所の顧問料に記帳代行料金が加算される場合の料金相場は、法人・個人事業主で異なります。参考レンジは「記帳代行の料金相場|法人・個人事業主別の目安と依頼先の違い」で解説していますので、あわせてご参照ください。

月間の仕訳数が多いほど自計化の作業量が増える傾向はありますが、仕訳数だけに単純比例するわけではありません。実際の作業量は、次のような要素によって変わります。

  • 現金取引の多さ
  • 銀行口座・クレジットカードの自動連携の有無
  • 定型取引の割合
  • 証憑の整理状態
  • 店舗・部門数
  • 外貨取引の有無
  • 売掛・買掛管理の有無
  • 在庫・固定資産の管理
  • 消費税区分の複雑さ

入力の遅れや試算表作成の遅れが目立ち始めた段階で、記帳代行への切り替えを検討する事業者が多いようです。

切り替えのタイミングについての留意点

記帳代行への切り替えは、決算期や申告期の直前を避け、それ以外のタイミングで進めた方が引継ぎがスムーズに進みやすいとされることがあります。申告直前の切り替えは、過去データの整理や資料の受け渡しが煩雑になりやすく、結果として双方の負担が増える場合があるためです。

一方で、決算・申告のタイミングは、これまでの記帳内容を見直す機会にもなるため、切り替えの検討時期として選ばれることもあります。事業の状況に応じて、無理のない時期を選ぶことが大切です。

ただし、次のような状況では、決算・申告の時期を待たずに早めに相談した方がよい場合があります。

  • 数か月分の記帳が滞留している
  • 申告期限が迫っている
  • 帳簿残高と預金残高が一致しない
  • 消費税の区分に不安がある
  • 税務署から照会が来ている
  • 融資などで試算表の提出が必要になった
  • 経理担当者が退職した

相談する際は、受任可能な時期、過去分の入力にかかる料金、申告まで対応してもらえるかどうかをあわせて確認しておきましょう。

依頼前に準備しておきたいこと

  • 過去の会計データ・帳簿の整理(会計ソフトのデータ、紙の帳簿など)
  • 銀行口座・クレジットカードの紐付け状況の確認
  • 使用する会計ソフトの選定・統一
  • 領収書・請求書などの証憑の保管方法の見直し
  • 電子取引データ(メール・EC・クラウドサービス等で受領した請求書等)の保存の見直し:印刷するだけでは足りず電子データのまま保存する必要があり、代行会社へ送付しただけで自社の保存義務を当然に満たすとは限りません。保存場所・検索方法・バックアップ・契約終了後の返却を確認し、紙と電子データを区別して管理しましょう

記帳代行会社と税理士事務所の業務範囲の違い

記帳代行は、税理士事務所だけでなく、記帳代行専門の会社に依頼することもできます。ただし、業務範囲には次のような違いがある点に注意が必要です。

税理士でない者は、法令上認められた例外を除き、税務代理、税務書類の作成、税務相談を業として行うことができません。

そのため、税理士・税理士法人でない記帳代行会社に依頼する場合、帳簿入力までは対応していても、確定申告書・法人税申告書の作成や税務相談には対応できません。申告まで依頼したい場合は、申告業務を担当する税理士・税理士法人が明示されているかを確認しましょう。

単純な入力作業と税務判断は異なる点にも注意が必要です。次のような個別判断は税務相談に該当する可能性があるため、誰が回答するのかを事前に確認しておきましょう。

  • 経費・損金に該当するかどうか
  • 交際費か会議費か
  • 修繕費か資本的支出か
  • 消費税の区分
  • 売上の計上時期
  • 家事按分の考え方

非税理士の記帳代行会社に依頼すること自体を一律に避ける必要はありません。税務判断が必要になった際に、登録税理士へ確認できる体制があるかどうかを、依頼前の確認項目にしておきましょう。

情報管理と再委託

記帳代行では、通帳やクレジットカード明細、請求書など、取引に関する情報を委託先と共有することになります。依頼前に次の点も確認しておきましょう。

  • 守秘義務の有無
  • データの保存場所
  • 多要素認証の利用有無
  • アクセス権限の設定
  • 再委託の有無
  • 海外事業者・海外サーバーの利用有無
  • 漏えい時の連絡体制
  • 契約終了後のデータ返却・削除
  • マイナンバーの取扱い
  • 会計ソフトの権限設定

銀行口座のログインID・パスワードをそのまま委託先に共有することはおすすめできません。会計ソフトや銀行が用意している招待・閲覧・連携等の正規機能を利用し、パスワードそのものを渡さない方法を選びましょう。個人情報や特定個人情報(マイナンバー)の取扱いを委託する場合は、委託先の選定基準や契約内容、取扱状況の確認が必要になります。

契約範囲の確認

「記帳代行」という言葉だけでは、対応範囲は事務所・会社によって異なります。言葉だけで範囲を判断せず、次の業務が契約に含まれるかどうかを依頼前に確認しましょう。

  • 証憑整理
  • 仕訳入力
  • 銀行・カード照合
  • 売掛・買掛管理
  • 固定資産登録
  • 給与仕訳
  • 消費税区分
  • 月次試算表の作成
  • 月次報告
  • 決算整理
  • 申告書作成
  • 税務相談
  • 税務署照会対応

依頼前チェックリスト

依頼を決める前に、次の項目を整理・確認しておくと、切り替え後のトラブルを避けやすくなります。

  • 自社入力から委託への切替日
  • 期首・開始残高
  • 未入力の取引
  • 売掛金・買掛金・未払金の残高
  • 預金残高との照合状況
  • 現金残高
  • 固定資産台帳
  • 借入金の返済予定表
  • 給与・役員報酬に関する資料
  • 在庫・棚卸の状況
  • 毎月の資料提出期限
  • 試算表の納品予定日
  • 過去分の遡及入力にかかる料金
  • 修正依頼の期限・料金
  • 解約時のデータ返却
  • 会計ソフトの契約名義

よくある質問

領収書を保管しなくてもよいですか

記帳代行を依頼しても、領収書・請求書等の証憑は原則として自社で一定期間保存する必要があります。代行会社へ提出した後の原本の扱い(返却・保管・破棄)は事前に確認しましょう。

記帳代行会社と税理士事務所の違いは何ですか

記帳代行会社は帳簿入力を専門に行いますが、税理士でない場合は税務代理・税務書類の作成・税務相談を行うことができません。申告まで依頼したい場合は、担当する税理士・税理士法人が明示されているかを確認しましょう。

数か月分の記帳が滞っていても依頼できますか

対応可否は依頼先によって異なります。過去分の遡及入力には別料金が発生する場合があるため、事前に見積りを確認しましょう。

決算直前からでも依頼できますか

対応可否は事務所・会社によって異なります。申告期限が迫っている場合は、受任可能な時期を早めに確認することが重要です。

会計ソフトのログイン情報を渡してもよいですか

ログインID・パスワードをそのまま共有することはおすすめできません。会計ソフトや銀行が用意している招待・閲覧・連携等の機能を利用し、権限を限定した形で共有する方法を確認しましょう。

記帳内容が間違っていた場合は誰が修正しますか

契約内容によって異なります。委託先側の入力誤りによる修正対応の範囲や、資料の提出漏れ・説明不足による誤りへの対応方針を、契約前に確認しておくと安心です。

自社記帳と外注を分けることはできますか

一部の取引のみを外注し、残りは自社で記帳するといった分担に対応できる依頼先もあります。対応可否と、その場合の責任範囲・確認方法は依頼先に確認しましょう。

自社に合ったタイミングで検討する

記帳代行への切り替えは、取引量や事業の状況によって最適なタイミングが異なります。まずは自計化の負担がどの程度になっているかを振り返り、費用と時間のバランスで判断することが大切です。

見積り金額そのものの比較ポイントは「税理士の見積り比較で見るべき3つのポイント」、オンライン対応と対面重視の違いは「オンライン対応の税理士と対面重視の税理士、どちらを選ぶか」、税理士との相性を見極めたい場合は「税理士との相性を見極める、初回相談で確認したいポイント」もあわせてご参照ください。

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※本記事は一般的な参考情報を提供するものであり、個別の税務相談や特定サービスの適法性を判断するものではありません。実際の依頼にあたっては、各事務所・各社の見積りについて、業務範囲、追加料金、税込・税抜の別をご確認ください。

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