相続税申告の報酬が加算される5つのケース
相続税申告の税理士報酬は、遺産総額に応じた「基本報酬」と、財産の内容や作業量に応じた「加算報酬」を組み合わせて計算する事務所が多く見られます。
そのため、基本報酬だけを見ると安く感じても、土地や非上場株式、相続人の人数などによって、最終的な支払額が大きく変わることがあります。
この記事では、公開されている税理士事務所の料金表などでよく見られる加算のパターンを代表的な5つに整理し、見積りを確認するときのポイントを解説します。ここで挙げる5つは代表例であり、加算の要因はこれに限られるものではありません。
※税理士報酬には法令上の統一料金や公定価格はありません。以下の金額は、2026年7月時点で確認できる複数の税理士事務所の公開料金表をもとにした例です。同一の事務所ですべての加算条件や金額が採用されているわけではなく、実際の料金や計算方法は事務所ごとに異なります。最終更新:2026年7月。金額の考え方については相場データについてもご参照ください。
見積り確認の前提:「遺産総額」の定義
加算の金額を確認する前に、まず基本報酬の計算基礎となる「遺産総額」が何を指すかを確認しておくことが重要です。事務所によって、財産を単純に合計した金額を指す場合と、債務控除後の金額に近い考え方をとる場合があり、基準が異なると加算前の基本報酬自体の比較が難しくなります。
ケース1:土地の評価が必要な場合
相続財産に土地が含まれる場合、路線価等を基礎として、土地の形状、接道状況、利用状況などを確認しながら評価する必要があります(宅地以外の地目は評価方法が異なります)。現地確認や役所調査を伴うこともあり、預金などに比べて評価作業が増えやすい財産です。
公開料金表の例では、各事務所の料金計算上の「1利用区分」につき、5万~6万円程度の加算を設けているケースがあります。ただし、税務上の評価単位(画地)、料金表上の「利用区分」、相場診断ツールに入力する「土地の数」は、それぞれ異なる考え方の数え方です。登記上は1筆の土地でも、自宅部分と貸駐車場部分に分かれていれば2区分として扱われることがあり、逆に複数の筆を一体として自宅の敷地に使用している場合は1区分として扱われることもあります。正式な区分・加算額は見積りで確認しましょう。
ケース2:相続人が複数いる場合
相続人の人数が増えると、本人確認、必要書類の案内、遺産分割内容の確認、申告書への記載などの作業が増えます。
そのため、相続人が2人以上の場合、2人目以降の相続人1人につき、基本報酬の一定割合を加算する事務所があります。公開料金表では、1人増えるごとに基本報酬の10%程度を加算する例などが見られます。
相続人全員を一律に数えるのか、2人目以降だけを加算対象にするのか、相続放棄をした人や未成年者・不在者がいる場合の数え方も事務所によって異なるため、見積り時に確認が必要です。
ケース3:非上場株式がある場合
被相続人が会社を経営していた場合などには、非上場会社の株式が相続財産に含まれることがあります。
非上場株式の評価では、会社の決算書、株主構成、資産・負債の内容、業種、会社規模などを確認し、財産評価基本通達に基づいて評価方法(類似業種比準方式、純資産価額方式など)を検討します。預金や上場株式よりも作業が複雑になりやすいため、基本報酬とは別に加算を設けている事務所があります。
公開料金表では、1社につき10万~20万円程度の加算とする例がありますが、会社の規模や保有資産、株主構成の複雑さ、過去の決算状況などによって個別見積りになることもあります。
ケース4:申告期限までの期間が短い場合
相続税の申告・納付期限は、通常、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。
申告期限まで3か月を切っているような場合には、短期間で資料収集、財産評価、遺産分割内容の確認、申告書作成を進める必要があります。そのため、特急対応として報酬の20%~50%程度を加算する事務所があります。なお、この「3か月」という基準は法令上の区切りではなく、事務所が特急対応の要否や受任可否を判断するために独自に設定している目安であり、事務所によって異なります。
期限までの残り期間が短いほど加算割合が高くなる料金表もあり、事務所の繁忙状況によっては依頼自体を受けてもらえない場合もあります。
期限が迫っている場合の対応については、「相続税の申告期限まで3か月を切ったら|特急料金・未分割・納税の注意点」で詳しく解説しています。
ケース5:資料の収集・整理に手間がかかる場合
預金口座が多い、過去の取引履歴の確認が必要、必要書類が揃っていない、財産の所在が不明確といった場合には、資料収集や財産確認に時間がかかります。
また、預金、有価証券、不動産、生命保険、非上場株式、国外財産など、財産の種類が多い場合も作業量が増えます。特に、家族名義であっても実質的に被相続人に帰属すると考えられる預金(名義預金)がある場合は、資金の出所や管理状況などを踏まえた実質的な帰属の検討が必要になり、作業量が増える要因になります。
こうしたケースでは、資料整理料、財産調査料、名義預金の検討料などの名目で追加報酬が発生したり、作業量に応じた個別見積りになったりすることがあります。ただし、これらの資料収集・調査の範囲は事務所により異なり、どこまでを事務所が代行し、どこからを依頼者が用意するかは契約内容によって変わります。
その他の加算要因
上記5つのケース以外にも、次のような要因により加算が発生することがあります。
- 国外財産がある場合(現地の資料収集や評価に手間がかかる)
- 書面添付(税理士が申告内容の根拠を記載した書面を添付する制度)を依頼する場合
- 税務調査への立会いなど、申告後の対応が必要になった場合
- 遺産分割協議が難航している、または相続人間の連絡調整が必要な場合
見積りで確認したいポイント
加算報酬については、「どの条件に該当すると、いくら加算されるのか」が見積り時点で明確になっていることが重要です。少なくとも、次の点を確認しておきましょう。
- 基本報酬の計算基礎となる「遺産総額」の定義
- 土地の加算は「筆」単位か「利用区分(画地)」単位か、何を1区分として数えるか
- 相続人加算は誰を対象に、どのように計算するか
- 非上場株式の評価が基本報酬に含まれるか
- 申告期限までの残り期間による加算があるか(何をもって「期限間際」とするかの基準を含む)
- 資料収集や財産調査、名義預金の検討に追加料金が発生するか
- 国外財産、書面添付、税務調査対応が報酬に含まれるか
- 表示金額が税込か税抜か
よくある質問
5つのケースに当てはまらなければ加算はありませんか
そうとは限りません。本記事の5つは代表的な例であり、国外財産や税務調査対応など、他の要因で加算が生じることもあります。
「1筆」と「1利用区分」の加算額は同じですか
同じとは限りません。税務上の評価単位(画地)と、事務所が定める料金表上の「利用区分」は考え方が異なる場合があり、正式な区分・加算額は見積りで確認する必要があります。
「申告期限まで3か月」という基準に法律上の根拠はありますか
ありません。事務所が特急対応の要否や受任可否を判断するための実務上の目安であり、事務所ごとに基準は異なります。
名義預金があると必ず加算されますか
必ずではありませんが、実質的な帰属の検討に手間がかかる場合は、資料調査料などの名目で加算や個別見積りになることがあります。
基本報酬ではなく最終的な総額で比較する
相続税申告の見積りは、基本報酬の金額だけでなく、自分の相続内容で発生する可能性がある加算まで含めた総額で比較することが大切です。
見積書を受け取ったら、業務範囲と加算条件を確認し、追加費用が発生する可能性がある項目について、あらかじめ説明を受けておきましょう。土地の加算については「土地が多い相続は申告費用が上がる?評価の手間と報酬の関係」、遺産5,000万円前後の目安は「遺産5,000万円の相続税申告、税理士費用はいくら?」もご参照ください。
タノモルの無料相場診断では、遺産総額に加えて、土地の数、相続人の人数、非上場株式の有無、申告期限まで3か月未満かどうかを入力することで、加算要因を織り込んだ概算の報酬レンジを確認できます。
※本記事は一般的な参考情報を提供するものであり、個別の相続税相談、財産評価、税額計算を行うものではありません。実際の依頼にあたっては、各事務所の見積りについて、加算条件、業務範囲、追加料金の可能性、税込・税抜の別をご確認ください。
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