確定申告

不動産所得の確定申告を税理士に依頼する費用の目安|事業的規模との違いと追加料金

会社員として給与を受け取りながらアパート・マンション等を賃貸経営している、いわゆる「サラリーマン大家」の方や、不動産賃貸業を営む個人事業主の方にとって、不動産所得の確定申告は減価償却や青色申告特別控除など確認事項が多く、給与所得だけの申告に比べて手間がかかりやすい分野です。税理士に依頼する場合の料金も、給与所得のみの確定申告とは別の考え方で決まる傾向があります。

この記事では、不動産所得がある方が確定申告を税理士に依頼する場合の費用の目安、料金が変わる要因、事業的規模になることで変わる点、見積りを依頼するときの確認事項を整理します。「確定申告だけを単発で税理士に依頼する「スポット依頼」とは」で触れている所得区分ごとの料金差のうち、不動産所得の部分を掘り下げる内容です。

※税理士報酬は、2002年4月1日施行の改正税理士法により従来の報酬規定が廃止され、現在は事務所ごとの自由料金となっています。以下は一定の条件を前提とした参考レンジであり、物件の規模・所得の内訳・依頼先の事務所などにより異なります。正式な金額は個別の見積りが必要です。最終更新:2026年8月。

不動産所得とは|対象となる所得の範囲

不動産所得とは、土地や建物などの不動産、不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付けによる所得をいいます。アパート・マンションの家賃収入、駐車場の貸付け(一定の管理を伴わないもの)などが該当します。事業として行う不動産の貸付けであっても、その所得区分は原則として「事業所得」ではなく「不動産所得」として扱われる点が、他の個人事業とは異なる特徴です。

不動産所得の確定申告を税理士に依頼する費用の目安

※以下は、外部の税理士事務所を横断した市場調査の平均値ではなく、タノモルが整理した参考レンジである点にご留意ください。公開されている料金には税込表示・税抜表示・記載なしが混在し、また室数を基準にする事務所と年間の賃料収入額を基準にする事務所が混在しているため、幅を持たせて示しています。青色申告特別控除を適用する場合を中心とした目安であり、実際の金額は事務所・条件により異なります。

物件規模の目安

確定申告費用の目安

1室・戸建て1棟程度

5万~8万円程度

2~4室程度

7万~10万円程度

5~10室程度

10万~13万円程度

事業的規模(おおむね5棟・10室以上)で青色申告特別控除65万円を適用する場合

15万~20万円程度

※「1室・戸建て1棟程度」「事業的規模で65万円控除を適用する場合」の各行は、具体的な内訳まで確認できた公開料金例がそれぞれ限られており、事務所によって差が大きい可能性があります。個人事業主全体の確定申告費用の考え方は「個人事業主の税理士費用相場|確定申告と顧問契約の違い」もあわせてご確認ください。

また、室数ではなく年間の賃料収入額を基準に料金を設定している事務所もあります(例:賃料収入300万円未満で5万円程度、1,000万円未満で10万円程度など)。基準の置き方は事務所によって異なるため、見積りを受け取った際は、室数と収入額のどちらを基準にした金額かを確認しておくと、他の事務所と比較しやすくなります。

料金に含まれる業務・含まれない業務

不動産所得の確定申告の基本料金には、一般的に次の業務が含まれます。

  • 不動産所得に関する確定申告書・青色申告決算書(不動産所得用)または収支内訳書の作成
  • 賃貸物件に係る減価償却費の計算
  • 税務署への申告書の提出代理(e-Taxまたは書面)

一方、次のような業務は別料金になったり、対象外とされたりすることがあります。

  • 期中の記帳(未整理の家賃入金・管理費・修繕費等の帳簿作成)
  • 物件の取得・売却があった年の追加確認
  • 不動産管理法人の設立や、法人化に関する相談

事業的規模になると何が変わるか|5棟10室基準

不動産の貸付けが「事業として行われているもの」か、それ以外かを区分する形式的な目安として、国税庁は次の基準を示しています。

  • 貸間・アパート等のように、独立した室数を有するものについては、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること
  • 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること

この基準を満たす場合、原則として「事業的規模」の不動産貸付けとして扱われます。事業的規模になることで、次のような取扱いの違いが生じます。

  • 青色申告特別控除の最高額が、非事業的規模の10万円から、事業的規模では55万円(e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行っている場合は65万円)に変わる
  • 取り壊し・災害などによる資産損失を、その年の必要経費に全額算入できる(非事業的規模の場合は、資産損失を差し引く前の不動産所得の金額が限度になる)
  • 回収不能となった賃料等の貸倒損失を、回収不能となった年分の必要経費に算入できる(非事業的規模の場合は、収入計上した年にさかのぼって計算し直す)
  • 生計を一にする親族に支払う給与について、事業専従者給与(白色申告の場合は事業専従者控除)の適用が可能になる

ただし、「5棟10室」はあくまで形式的な目安であり、この基準を満たさない場合でも実質的に事業と認められることや、逆に基準を満たしていても実態が乏しい場合に事業的規模と認められないことがあり得ます。該当性の判断に迷う場合は、税務署または税理士に確認しましょう。

なお、料金調査では、事業的規模やインボイス発行事業者への該当を境に、確定申告のみのスポット対応ではなく顧問契約での対応に切り替える事務所の例も確認しました。これは国税庁が定める税務上のルールではなく、各事務所の料金設定・受任方針によるものです。事業的規模に近づいてきた場合は、スポット対応を継続してもらえるか、顧問契約への切り替えが必要かをあわせて確認しておくとよいでしょう。

別料金になりやすい業務

不動産所得の確定申告の基本料金とは別に、次のような業務は追加料金が発生する場合があります。

  • 記帳代行(家賃入金・管理費・修繕費・ローン返済等の未整理な帳簿の作成)
  • 青色申告特別控除65万円の適用に必要な電子申告(e-Tax)・電子帳簿保存への対応
  • 物件の売却による譲渡所得の申告(不動産所得とは別の所得区分として、別途申告・別料金になりやすい業務です)
  • 消費税の申告(住宅の貸付けは非課税取引ですが、駐車場のみの貸付けや事業用テナントの賃貸などは課税取引になり得ます)
  • 複数物件の同一年内の取得・売却があった場合の追加確認

ある事務所の料金例では、同じ確定申告費用でも消費税申告の有無で3万円程度の差が生じているケースを確認しています(1件の情報源に基づく参考例であり、事務所による差は大きいと考えられます)。記帳代行の料金相場は「記帳代行の料金相場|法人・個人事業主別の目安と依頼先の違い」で解説しています。あわせてご確認ください。

料金が変わる要因

物件規模が同程度でも、次のような要素によって料金が変わることがあります。

  • 室数・棟数、または年間の賃料収入額(どちらを基準にするかは事務所により異なります)
  • 白色申告か青色申告か、青色申告特別控除の種類(10万円控除・55万円控除・65万円控除)
  • 管理会社に委託しているか、自主管理かどうか、記帳・資料の整理状況
  • 給与所得や事業所得など、不動産所得以外の所得の有無
  • 物件の取得・売却、大規模修繕など、その年固有の取引の有無

白色申告の場合は室数が増えても料金がほとんど変わらないと案内している事務所がある一方、青色申告で控除額が上がるほど料金差が大きくなる事務所もあり、事務所によって料金の決め方に差が見られました。見積りを比較する際は、どの条件を前提にした金額かを確認することが重要です。

見積り・依頼時に確認したい事項

不動産所得の確定申告の見積りを比較するときは、少なくとも次の点を確認しましょう。

  • 室数・棟数と年間賃料収入額のどちらを基準にした料金か
  • 表示金額が税込か税抜か
  • 白色申告と青色申告、青色申告特別控除の種類(10万円・55万円・65万円)のどれを前提とした料金か
  • 記帳(帳簿作成)が完了していることを前提とした料金か、記帳代行を含む料金か
  • 事業的規模になった場合や物件を追加した場合、スポット対応を継続できるか、顧問契約への切り替えが必要か
  • 物件の売却(譲渡所得)や消費税の申告が必要になった場合の追加料金

見積りを比較するときの考え方は「税理士の見積り比較で見るべき3つのポイント」でも解説しています。あわせてご確認ください。

よくある質問

不動産所得の確定申告は自分でできますか

物件数・室数が少なく取引がシンプルな場合は、ご自身で対応する方もいます。ただし、減価償却費の計算や青色申告特別控除の要件確認など、確認事項が多くなりやすい分野でもあります。ご自身での対応に不安がある場合は、税理士への依頼を検討するとよいでしょう。

事業的規模になると税理士費用は上がりますか

事業的規模になると、青色申告決算書の記載内容が増えたり、事業専従者給与などの論点が生じたりするため、料金が上がる、または顧問契約が前提になると案内している事務所を確認しています。ただし、これはすべての事務所に共通する取扱いではなく、事務所の料金設定によって異なります。

給与所得者(会社員)でも不動産所得の確定申告は必要ですか

給与以外の所得(不動産所得を含む)が一定額を超える場合など、確定申告が必要になるケースがあります。要否は収入の状況によって個別に異なるため、税務署または税理士にご確認ください。

マンション・アパートを売却した年の確定申告費用も同じですか

物件の売却による所得は「譲渡所得」として不動産所得とは別の所得区分になります。そのため、通常の不動産所得の申告とは別途の申告・別料金になりやすい点にご注意ください。

青色申告特別控除の65万円と55万円は何が違いますか

正規の簿記の原則による記帳などの要件を満たすと55万円の控除が受けられます。これに加えて、e-Taxによる電子申告、または一定の要件を満たす電子帳簿保存を行っている場合は65万円の控除が受けられます。いずれの要件も満たさない青色申告者は10万円の控除となります。

まとめ

不動産所得の確定申告を税理士に依頼する費用は、室数・棟数や年間賃料収入額、白色申告か青色申告か、青色申告特別控除の種類、事業的規模に該当するかどうかなどによって変わります。事務所によって料金の基準の置き方(室数基準か収入規模基準か)や、事業的規模になった場合の対応方針も異なるため、見積り時にどの条件を前提とした金額かをあわせて確認することが重要です。

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※本記事は一般的な参考情報を提供するものであり、個別の税務相談、税額計算、特定の税理士事務所の料金評価を行うものではありません。実際の依頼にあたっては、各事務所の見積りについて、税込・税抜の別、業務範囲、追加料金の条件をご確認ください。

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