消費税申告を税理士に依頼する費用の目安|追加料金と見積りの確認事項
消費税の申告を税理士に依頼する場合、料金は「2割特例」「簡易課税」「一般課税(原則課税)」のどの方式を適用するか、顧問契約があるかスポット依頼か、記帳が済んでいるかどうかによって変わります。同じ売上規模の事業者でも、課税方式や依頼範囲によって金額に差が出ることは珍しくありません。
この記事では、消費税申告を税理士に依頼する場合の課税方式別の料金の目安、追加料金が発生しやすい業務、見積りを依頼するときの確認事項を整理します。
※税理士報酬は、2002年4月1日施行の改正税理士法により従来の報酬規定が廃止され、現在は事務所ごとの自由料金となっています。以下は一定の条件を前提とした参考レンジであり、課税方式・取引量・記帳状況・顧問契約の有無などにより異なります。正式な金額は個別の見積りが必要です。最終更新:2026年8月。
課税方式別・消費税申告料金の目安
消費税の納付税額の計算方法には、主に「2割特例」「簡易課税」「一般課税(原則課税と呼ばれることもあります。以下、本記事では一般課税で統一します)」の3つがあります。それぞれの参考レンジは次のとおりです。
※以下は、顧問契約があり記帳が完了している場合を前提とした、消費税申告のみにかかる料金の目安です。外部の税理士事務所を横断した市場調査の平均値ではなく、タノモルが整理した参考レンジである点にご留意ください。決算申告料や記帳代行料は含まれておらず、別料金になる場合があります。
課税方式 | 消費税申告料金の目安(税抜) |
|---|---|
2割特例 | 2万~4万円 |
簡易課税 | 3万~5万円 |
一般課税(原則課税) | 5万~8万円 |
還付申告・輸出取引・複雑な海外取引 | 個別見積り |
※2割特例の料金は、制度名を明示した公開料金例が限られるため、簡易課税等の公開料金例と、想定される申告作業の範囲をもとに、タノモルが整理した参考レンジです。市場調査や統計に基づく料金ではありません。
2割特例は納付税額の計算がシンプルであるため簡易課税より低めに、一般課税は帳簿・適格請求書等の確認や仕入税額の区分計算が必要になるため高めになる傾向がありますが、いずれも事務所や取引内容によって変動します。法人の決算申告そのものの料金については「法人決算申告を税理士に依頼する費用の目安|内訳と追加料金を解説」、顧問契約全体の料金水準については「法人の税理士顧問料相場はいくら?年商別の早見表」もあわせてご確認ください。
2割特例とは|期限がある経過措置
2割特例は、インボイス制度の開始を機に免税事業者からインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として課税事業者になった事業者について、納付税額を売上げに係る消費税額の2割とすることができる経過措置です。
適用できるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間に限られます。個人事業者は令和5年分(10~12月分)から令和8年分まで、3月決算の法人であれば令和6年3月期から令和9年3月期までが対象で、いずれも最大4回の申告が上限です。恒久的な制度ではなく、期限のある措置である点に注意してください。
次のいずれかに該当する場合は、2割特例を適用できません。
- インボイス発行事業者ではない課税事業者
- 基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者
- 資本金1,000万円以上の新設法人
- 調整対象固定資産または高額特定資産の取得により、その課税期間に免税事業者とならない事業者
- 消費税課税期間特例選択届出書により課税期間を短縮している事業者
2割特例の適用期間が終了した後、令和8年度税制改正により、個人事業者を対象とした「3割特例」が令和9年分・令和10年分の申告について新設されました。3割特例は個人事業者向けの措置であり、法人は対象になっていません。2割特例・3割特例のいずれも期限が区切られた経過措置であり、その後は簡易課税または一般課税に移行することになります。
簡易課税とは|事業区分に応じたみなし仕入率
簡易課税は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者が、基準期間(個人事業者は前々年、法人は原則として前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、事業区分(卸売業・小売業など6区分)ごとに定められたみなし仕入率を売上げに係る消費税額に乗じて、仕入れに係る消費税額を計算する制度です。
簡易課税を選択する場合は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書を提出する必要があります。また、いったん選択すると、原則として2年間は継続して適用しなければなりません。基準期間の課税売上高が5,000万円を超える課税期間は、簡易課税を適用できません。
一般課税(原則課税)とは|仕入税額控除の要件
一般課税は、課税売上げに係る消費税額から、実際の課税仕入れ等に係る消費税額を控除して納付税額を計算する方法です。2割特例や簡易課税が売上げを基準にみなし計算を行うのに対し、一般課税では仕入税額控除のために帳簿および適格請求書等(インボイス)の保存が要件となります。2割特例・簡易課税は仕入税額の計算にみなし仕入率を用いるため、この計算のためだけに個々の適格請求書を保存する必要はありませんが、一般課税ではこの保存が仕入税額控除の要件になる点が異なります。
また、その課税期間の課税売上高が5億円超、または課税売上割合が95%未満の場合は、課税仕入れ等を課税売上げにのみ対応するもの・非課税売上げにのみ対応するもの・共通するものに区分して計算する「個別対応方式」か、区分せずに課税売上割合を乗じて一括計算する「一括比例配分方式」のいずれかで仕入控除税額を計算します。一括比例配分方式を選択した場合、2年間以上継続して適用した後でなければ個別対応方式には変更できません。どちらの方式を選択できるか、選択済みかは見積り時に確認しておきたいポイントです。
消費税がかかる取引とかからない取引
消費税の申告料金は、課税売上げと非課税売上げの内訳によっても複雑さが変わります。取引は大きく次の3つに分かれます。
- 課税取引:商品の販売やサービスの提供など。標準税率10%と軽減税率8%(飲食料品の譲渡など一定の取引)の複数税率が適用されます。
- 非課税取引:土地の譲渡・貸付け、住宅の貸付け、社会保険診療など、消費税の性質になじまない、または社会政策的な配慮から課税しないとされる取引です。
- 不課税取引:給与の支払い、寄附金など、対価性がなく消費税の課税対象そのものに当たらない取引です。
非課税売上げの割合が高い事業者は、課税売上割合の計算や、一般課税を選択した場合の仕入税額控除の方式にも影響するため、見積り時に事業内容を正確に伝えることが重要です。
別料金になりやすい業務
消費税申告の基本料金とは別に、次のような業務は追加料金が発生する場合があります。
- 記帳代行
- 法人決算申告・所得税確定申告(消費税申告とあわせて依頼する場合の申告書作成)
- 簡易課税制度選択届出書など各種届出書の作成・提出
- 過年度の修正申告
- 税務調査対応
- 申告期限直前の依頼
記帳代行の料金相場は「記帳代行の料金相場|法人・個人事業主別の目安と依頼先の違い」で解説しています。あわせてご確認ください。
還付申告・輸出取引の料金が個別見積りになりやすい理由
消費税の還付申告は、税務署による確認が慎重に行われやすく、資料の精査や追加のやり取りが必要になることがあります。輸出取引についても、輸出免税の適用を裏付ける書類の確認作業が必要になる場合があります。ただし、これらの依頼が常に高額になるとは限らず、料金体系は事務所によって、追加料金を定額で設定する場合や、還付見込額に応じた料金を設定する場合など様々です。該当する取引がある場合は、料金の算定方法も含めて事前に確認しておきましょう。
消費税申告の期限
消費税の確定申告と納税の期限は、原則として次のとおりです。
- 法人:課税期間終了の日から2か月以内
- 個人事業者:12月31日の属する課税期間について、翌年3月31日まで
「法人税の申告期限の延長の特例」の適用を受ける法人が、所轄税務署長に「消費税申告期限延長届出書」を提出した場合は、消費税の確定申告期限も1か月延長されます。ただし、申告期限が延長された期間の消費税・地方消費税の納付については、その延長された期間に係る利子税をあわせて納付する必要があります。申告期限が近い場合は特急料金が発生することがあるため、早めに相談することをおすすめします。
税理士へ見積りを依頼するときの確認事項
消費税申告の見積りを比較するときは、少なくとも次の点を確認しましょう。
- どの課税方式(2割特例・簡易課税・一般課税)を前提とした料金か
- 表示金額が税込か税抜か
- 顧問契約が前提の料金か、消費税申告のみのスポット料金か
- 記帳が完了していることを前提とした料金か
- 還付申告・輸出取引がある場合の追加料金の算定方法
- 消費税申告期限延長の届出に対応してもらえるか
- 申告期限直前に依頼した場合の追加料金の有無
見積りを比較するときの考え方は「税理士の見積り比較で見るべき3つのポイント」でも解説しています。あわせてご確認ください。
よくある質問
2割特例はいつまで利用できますか
2割特例は令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間に限られる経過措置です。その後は、個人事業者に限り令和9年分・令和10年分について3割特例(法人は対象外)が設けられていますが、これも期限のある措置です。適用可否は年によって変わるため、申告のたびに税理士へ確認することをおすすめします。
簡易課税と一般課税はどちらが安くなりますか
みなし仕入率が事業の実態より高い業種では簡易課税が有利になりやすく、多額の設備投資などで還付が見込まれる場合は一般課税の方が有利になることがあります。どちらが有利かは事業内容によって異なるため、一概には言えません。
消費税の還付申告は必ず料金が高くなりますか
還付申告は資料確認などの追加対応が必要になることがありますが、必ず高額になるとは限りません。料金の算定方法(定額か、還付見込額に応じるかなど)は事務所によって異なるため、見積り時に確認しましょう。
消費税申告だけを税理士に依頼できますか
消費税申告のみをスポットで依頼できる事務所もあります。ただし、記帳状況の確認や他の申告との整合確認が必要になる場合があり、顧問契約がある場合の料金と比べて条件が異なることがあります。依頼範囲と料金の前提を事前に確認しましょう。
簡易課税をやめて一般課税に戻すことはできますか
簡易課税は、選択の効力が生じた課税期間の初日から2年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ、選択をやめる届出書を提出できません。原則として2年間は継続適用が必要になる点に注意してください。
まとめ
消費税申告を税理士に依頼する費用は、2割特例・簡易課税・一般課税のどの課税方式を適用するか、顧問契約の有無、記帳状況、還付申告や輸出取引の有無などによって変わります。2割特例や3割特例は期限のある経過措置である点を踏まえたうえで、料金の前提と算定方法を見積り時にあわせて確認することが重要です。
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※本記事は一般的な参考情報を提供するものであり、個別の税務相談、税額計算、特定の税理士事務所の料金評価を行うものではありません。実際の依頼にあたっては、各事務所の見積りについて、税込・税抜の別、業務範囲、追加料金の条件をご確認ください。
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